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板金の材質選定:環境・成形・表面処理の順に決める

材質選定はデータベースを引く作業に見えます。引張強度が合うグレードを探すだけ、というわけです。しかし実際の決め手は腐食・成形・表面処理の適合性で、コストの話に入る前に、この3つが候補の大半をふるい落とします。

監修 Tom、シニアプロセスエンジニア·東莞の自社工場 · 精密板金 11 年以上
板金の材質選定:環境・成形・表面処理の順に決める
短い回答

板金の材質は、環境がどう作用するか、成形のどこに耐える必要があるか、どの表面処理を受け入れるか、そして最後にコスト、という順で選びます。この順序を誤ると、必要な曲げがかからない耐食鋼に落ち着いてしまう案件が後を絶ちません。

環境を最初に。後から直せないからです

屋内で乾燥し、温度が安定している環境は最も簡単なケースです。冷間圧延鋼に粉体塗装で対応でき、一覧のなかで最も安い答えになります。湿度、結露、洗浄が加わると、亜鉛めっき鋼が妥当な既定になります。塗膜では切り口をしっかり覆えないのに対し、めっきはその切り口を保護するからです。

沿岸部、薬品、滅菌の用途では答えがまったく変わります。ここで問うのは、どの塗装が最も長持ちするかではなく、そもそも塗装で受け入れられるかどうかです。どんな塗装にも、いずれ腐食の起点になるエッジ、傷、締結部があるからです。このときステンレスは格上げではなく要件になります。

成形性。ここでプロジェクトが想定外に出会います

データシート上では互換に見える2つのグレードが、プレスブレーキではまったく違う挙動をします。5052 アルミは成形しやすく、それなりに厳しい曲げにも耐えます。同じ板厚の 6061 は、同じ半径ではるかに割れやすく、とくに圧延方向を横切る曲げで目立ちます。オーステナイト系ステンレスは成形中に加工硬化するため、連続した厳しい曲げでは2回目のほうが1回目より大きな力が要ります。

これは材質を避ける理由にはなりません。図面をリリースする前に、実際のグレードと調質で最小曲げ半径を確認する理由です。最小半径未満の曲げを、現場に何とかさせるのではなく。

材質得意なこと不得意なこと
冷間圧延鋼(SPCC)成形、溶接、コスト腐食しやすい。露出するなら表面処理が必要
亜鉛めっき鋼(SGCC、SECC)塗装なしでの耐食、電気的な用途溶接品質が落ちる。溶接部でめっきが燃える
304 ステンレス耐食性、食品接触、外観加工硬化する。工具に負担。材料が高価
316 / 316L ステンレス塩化物・薬品環境コスト。板厚があると切断が遅い
5052 アルミ成形性、重量、アルマイト処理同じ板厚では鋼より剛性が低い
6061 アルミ強度、切削性、アルマイト処理厳しい半径での曲げ割れ。成形の許容が小さい
銅 / 真鍮導電性、シールド、装飾的な表面処理コスト。軟らかく、傷が付きやすい

当社が保有するグレードと、それぞれの不得意な点

表面処理の適合性は制約であって、後から足すものではありません

アルマイト処理はアルミにしか効きません。表面を覆うのではなく改質するため、使用中に付いた傷は目立ったまま残ります。粉体塗装は素地を隠しますが、導電部やシール部はマスキングが必要です。亜鉛めっきは、高強度部品では水素脆化の検討を伴い、小さな締結部品ではねじの嵌め合いを変えます。

実務上の帰結は、材質と表面処理は一つの判断だということです。材質を先に決めて表面処理を後回しにすると、「304 のほうが良いから指定した」という結論に行き着き、ステンレスでなくてもよかった部品にステンレスの代金を払うことになります。

  • 合金名だけでなく、調質や状態まで指定します。5052-H32 と 6061-T6 では挙動が違います。
  • 曲げが厳しい箇所は、材質を変える前に、半径を大きくするか、圧延方向を横切る向きから外します。
  • 重量が重要な箇所では、剛性は板厚の3乗で効きます。少し厚いアルミ部品が、薄い鋼部品に勝ることがあります。
  • 濡れた環境で異種金属が接する箇所は、組立任せにせず、絶縁層か塗装を設計段階で計画します。

よくあるご質問

ステンレスは常に優れた材質ですか?

いいえ。腐食や衛生が支配的な要件であるときには正しい材質で、そうでないときには高価な既定値にすぎません。屋内機器なら、塗装鋼板が通常は安く同等に働きます。また 304 は成形が難しく切断も遅いため、割高な分は材料価格だけでは説明できない大きさになります。

5052 アルミと 6061 アルミの違いは何ですか?

5052 は成形用の合金で、より厳しい半径まで曲げられ、折り曲げる部品では安全な選択です。6061 はより強く切削性も良いのですが、厳しい曲げ半径では割れやすく、とくに圧延方向を横切るときに目立ちます。切削する部品は 6061、成形する部品は 5052 を選びます。

板厚はどう選べばよいですか?

まず用途から決め、次に制約と突き合わせて確認します。板厚は最小穴径、コーナーR、フランジ長、曲げ力を決めるので、厚くすると他のすべてが厳しくなります。剛性が目的なら、成形したリブや返しフランジのほうが、厚い板に替えるより安く済むのが通常です。

最小半径未満の曲げは成形できますか?

安定してはできませんし、繰り返しもできません。材質と調質の最小半径を下回ると外面が割れ、しかもその不具合は成形中ではなく成形後に現れることが多いです。厳しい半径が本当に必要な箇所は、プレスで追い込むより、設計段階で材質を変えるか逃げ(レリーフ)を設けるほうを選びます。

材料証明書は発行してもらえますか?

はい。ご依頼があれば発行し、量産のご注文では通常は追加費用がかかりません。構造上または規制上の要件がある部品や、材質グレードそのものが監査対象になっている場合は、とくに請求する価値があります。

図面を送れば、確かな回答が返ります

技術者がモデルの製造性を確認し、数量を反映した見積もりを返します。価格を左右するDFM指摘も添えます。