設計・エンジニアリング

板金公差は工程ごとにどこまで保てるか

公差とは、その工程が再現できるものについての約束であり、部品がこうあるべきだという願いではありません。板金は成形され、引っ張られる材料なので、公差の挙動は機械加工部品とは異なります。その違いを無視した図面は、精度を買えぬまま高くつきます。

監修 Tom、シニアプロセスエンジニア·東莞の自社工場 · 精密板金 11 年以上
板金公差は工程ごとにどこまで保てるか
短い回答

板金公差は工程によって変わります。レーザー切断は切断輪郭でおよそ ±0.1 mm、CNC 曲げは曲げ角度で約 ±0.5° を保ち、フランジ位置は曲げ手順に沿って積み上がります。一般寸法は通常 ISO 2768-m でカバーし、図面上の個別指定は機能部だけに絞ります。

01各工程が保てる公差

フィーチャー通常の能力注記
レーザー切断の輪郭±0.1 mm通常の材料と板厚の範囲内
打抜きのフィーチャー±0.1 mm工具とパンチ・ダイのクリアランスに依存
曲げ角度±0.5°CNC プレスブレーキ。最新機は ±0.1° まで再現
曲げ位置/フランジ長±0.2 – 0.5 mm曲げ手順に沿って積み上がる
穴位置(重要でないもの)一般公差ISO 2768-m でカバー
穴と曲げの近接2.5 × t + 内側半径が最小これより近いと穴がひずむ
溶接組立品の全体±0.5 – 1 mm熱によるひずみ。管理はできるが排除はできない
平面度(成形パネル)サイズ、板厚、仕上げによる塗装は応力を加える。仕上げ前に合意する
一般寸法ISO 2768-m(クラス m)図面が別段の指定をしない限り既定

板金の通常の工程能力

02曲げ部品で公差が積み上がる理由

レーザーで切断したブランクは、何も動かないので寸法をよく保ちます。曲げは違います。曲げるたびに材料が伸びて圧縮され、後続するすべてのフィーチャーの位置は、それ以前の曲げの精度に依存します。6 か所の曲げをもつ部品は、個々の曲げがすべて公差内でも、最後の穴で外れていることがあります。

だからこそフランジ位置の公差は、曲げが実際に基準とするデータムに対して表記し、ずれる部品の直し方は、すべての個別指定を厳しくするのではなく、データムを明示して指名することが通常です。展開図は、汎用の表ではなく、その工場が使う工具と K ファクターから作らなければならない理由もここにあります。

03ISO 2768-m と、いつ厳しくするか

ISO 2768-m の一般公差は、長さと角度の公差を一つの指示にまとめたものです。板金部品では、単に存在すればよい穴、揃えばよい縁、そして外観のフィーチャー——つまり図面の大部分をカバーします。

厳しくするのは、フィーチャーが何か機能を果たす箇所だけにします。PEM インサートを位置決めする穴、合わせ面、購入部品と一致しなければならない取付パターン、シール面です。これらを個別に指定し、残りは一般公差に委ねれば、工場には、どうせ満たせない一律の要求ではなく、明確な優先順位が渡ります。

  • 図面には一般公差の指示を一つだけ置き、個別指定は機能部だけにする。
  • 重要な寸法を測る基準となるデータムを指名し、解釈に委ねない。
  • 溶接の熱が材料を動かすことを前提にし、溶接前ではなく溶接後の寸法を指定する。
  • 仕上げが板厚と応力を加えることを忘れない。塗装後の寸法は素地の寸法とは異なる。

04指定した公差をどう測るか

公差は、検証できて初めて意味をもちます。すべての検査活動には費用とリードタイムがかかるので、検査計画は見積もりと同時に合意します。量産ではサンプリングとゲージ、新しい金型やプログラムでは全寸の初品、顧客仕様が要求する箇所では CMM の報告です。

図面が、工程が再現できる以上に厳しい公差を指定した場合、正直な答えは、その公差で検査し、その割合で不合格になるということです。個別指定を調整するほうが、限界を買って知るより、ほぼ常に安く済みます。

よくあるご質問

板金の図面には、どの公差を入れればよいですか?

既定は ISO 2768-m の一般公差とし、個別指定は位置決め、シール、荷重を受けるフィーチャーだけに絞ります。そうすれば工場には現実的な目標が渡り、検査の工数を価値の出る箇所に集められます。

レーザー切断の精度はどのくらいですか?

通常の材料と板厚の範囲内であれば、切断輪郭で ±0.1 mm を保ちます。コーナー半径と穴径はカーフ幅から決まり、工程はその範囲内で再現できます。

CNC 曲げの精度はどのくらいですか?

量産では曲げ角度でおよそ ±0.5°、最新機は ±0.1° の再現性で立ち上げています。フランジ位置は別の公差で、曲げ手順に沿って積み上がります。

溶接組立品の寸法が合わないのはなぜですか?

熱の入力を金属がひずませるからです。溶接順序と治具を管理しても、溶接後の組立品は、溶接前の同じ部品より広い幅でしか保てません。溶接後の寸法を指定し、重要な箇所には溶接後の機械加工または調整の工程を加えます。

表面処理で公差は変わりますか?

はい、測定できるほど変わります。粉体塗装、アルマイト、めっきはいずれも板厚を加え、特にアルマイトは内側と外側の両方に成長する化成皮膜です。塗装後の寸法が重要な箇所では、公差が素地と仕上げ後のどちらに適用されるかを指定します。

図面を送れば、確かな回答が返ります

技術者がモデルの製造性を確認し、数量を反映した見積もりを返します。価格を左右するDFM指摘も添えます。