板金公差は工程ごとにどこまで保てるか
公差とは、その工程が再現できるものについての約束であり、部品がこうあるべきだという願いではありません。板金は成形され、引っ張られる材料なので、公差の挙動は機械加工部品とは異なります。その違いを無視した図面は、精度を買えぬまま高くつきます。

板金公差は工程によって変わります。レーザー切断は切断輪郭でおよそ ±0.1 mm、CNC 曲げは曲げ角度で約 ±0.5° を保ち、フランジ位置は曲げ手順に沿って積み上がります。一般寸法は通常 ISO 2768-m でカバーし、図面上の個別指定は機能部だけに絞ります。
01各工程が保てる公差
| フィーチャー | 通常の能力 | 注記 |
|---|---|---|
| レーザー切断の輪郭 | ±0.1 mm | 通常の材料と板厚の範囲内 |
| 打抜きのフィーチャー | ±0.1 mm | 工具とパンチ・ダイのクリアランスに依存 |
| 曲げ角度 | ±0.5° | CNC プレスブレーキ。最新機は ±0.1° まで再現 |
| 曲げ位置/フランジ長 | ±0.2 – 0.5 mm | 曲げ手順に沿って積み上がる |
| 穴位置(重要でないもの) | 一般公差 | ISO 2768-m でカバー |
| 穴と曲げの近接 | 2.5 × t + 内側半径が最小 | これより近いと穴がひずむ |
| 溶接組立品の全体 | ±0.5 – 1 mm | 熱によるひずみ。管理はできるが排除はできない |
| 平面度(成形パネル) | サイズ、板厚、仕上げによる | 塗装は応力を加える。仕上げ前に合意する |
| 一般寸法 | ISO 2768-m(クラス m) | 図面が別段の指定をしない限り既定 |
板金の通常の工程能力
02曲げ部品で公差が積み上がる理由
レーザーで切断したブランクは、何も動かないので寸法をよく保ちます。曲げは違います。曲げるたびに材料が伸びて圧縮され、後続するすべてのフィーチャーの位置は、それ以前の曲げの精度に依存します。6 か所の曲げをもつ部品は、個々の曲げがすべて公差内でも、最後の穴で外れていることがあります。
だからこそフランジ位置の公差は、曲げが実際に基準とするデータムに対して表記し、ずれる部品の直し方は、すべての個別指定を厳しくするのではなく、データムを明示して指名することが通常です。展開図は、汎用の表ではなく、その工場が使う工具と K ファクターから作らなければならない理由もここにあります。
03ISO 2768-m と、いつ厳しくするか
ISO 2768-m の一般公差は、長さと角度の公差を一つの指示にまとめたものです。板金部品では、単に存在すればよい穴、揃えばよい縁、そして外観のフィーチャー——つまり図面の大部分をカバーします。
厳しくするのは、フィーチャーが何か機能を果たす箇所だけにします。PEM インサートを位置決めする穴、合わせ面、購入部品と一致しなければならない取付パターン、シール面です。これらを個別に指定し、残りは一般公差に委ねれば、工場には、どうせ満たせない一律の要求ではなく、明確な優先順位が渡ります。
- 図面には一般公差の指示を一つだけ置き、個別指定は機能部だけにする。
- 重要な寸法を測る基準となるデータムを指名し、解釈に委ねない。
- 溶接の熱が材料を動かすことを前提にし、溶接前ではなく溶接後の寸法を指定する。
- 仕上げが板厚と応力を加えることを忘れない。塗装後の寸法は素地の寸法とは異なる。
04指定した公差をどう測るか
公差は、検証できて初めて意味をもちます。すべての検査活動には費用とリードタイムがかかるので、検査計画は見積もりと同時に合意します。量産ではサンプリングとゲージ、新しい金型やプログラムでは全寸の初品、顧客仕様が要求する箇所では CMM の報告です。
図面が、工程が再現できる以上に厳しい公差を指定した場合、正直な答えは、その公差で検査し、その割合で不合格になるということです。個別指定を調整するほうが、限界を買って知るより、ほぼ常に安く済みます。
よくあるご質問
板金の図面には、どの公差を入れればよいですか?
既定は ISO 2768-m の一般公差とし、個別指定は位置決め、シール、荷重を受けるフィーチャーだけに絞ります。そうすれば工場には現実的な目標が渡り、検査の工数を価値の出る箇所に集められます。
レーザー切断の精度はどのくらいですか?
通常の材料と板厚の範囲内であれば、切断輪郭で ±0.1 mm を保ちます。コーナー半径と穴径はカーフ幅から決まり、工程はその範囲内で再現できます。
CNC 曲げの精度はどのくらいですか?
量産では曲げ角度でおよそ ±0.5°、最新機は ±0.1° の再現性で立ち上げています。フランジ位置は別の公差で、曲げ手順に沿って積み上がります。
溶接組立品の寸法が合わないのはなぜですか?
熱の入力を金属がひずませるからです。溶接順序と治具を管理しても、溶接後の組立品は、溶接前の同じ部品より広い幅でしか保てません。溶接後の寸法を指定し、重要な箇所には溶接後の機械加工または調整の工程を加えます。
表面処理で公差は変わりますか?
はい、測定できるほど変わります。粉体塗装、アルマイト、めっきはいずれも板厚を加え、特にアルマイトは内側と外側の両方に成長する化成皮膜です。塗装後の寸法が重要な箇所では、公差が素地と仕上げ後のどちらに適用されるかを指定します。
図面を送れば、確かな回答が返ります
技術者がモデルの製造性を確認し、数量を反映した見積もりを返します。価格を左右するDFM指摘も添えます。